代表:佐藤 剛  Takeshi Sato

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■ギター トピック

■ 量産品と手工品

 クラシックギターの場合,量産品または手工品という大まかな分類がありますが,何をもって量産,手工と言うかの定義はありません。必ずしも手工品の方が優れているというわけではなく,量産品であっても,手間をかければ手工品以上のものもありますし,手工品であっても雑な作りのものはいくらでもあります。大手のメーカーになれば,百万円以上するものであっても,ある程度の数が生産されていれば量産ともいえるでしょう。ですから本来は量産かどうかよりも,質が良いか悪いかと言うべきです。ただしギターの場合,ナットやサドル,フレットなど直接音や演奏性に大きく影響してくるところは,一台ごと薄紙1枚以下の非常に細かな精度での調整が不可欠です。そうしますとやはり工場大量生産品では,製作家が一台ごと行うような細かな調整は不可能で,弾きやすさも大きく異なります。

 

 次にいわゆる量産品や手工品と呼ばれるギターの特徴や違いを見ていきましょう。まず一般に量産品は,手元での音量を重視した設計になっており,楽器店の店頭で弾いた際には,比較的音量が大きく感じられます。一方それなりの価格帯の手工品では,手元での音量よりも遠達性(音を遠くに飛ばす性能)を重視しています。高級品になればなるほど,大きなホールで弾くことを前提に作られており,目の前で聴いた絶対的な音量よりも,広い会場の隅々まで,低音から高音までをバランス良く響かせることを重視しています。ですから小さな部屋や楽器店の店頭で弾くと,安価なギターの方が,音量があるように感じる事がありますが,少し広い会場に持っていくと,その響き方には雲泥の差があります。

 

 また量産品は誰が弾いても常に大きな音量で鳴りますが,逆にピアニッシモ(弱く弾いた場合)で鳴らすことが難しく,表現される音色の種類も少ないために,表現力が乏しいという傾向にあります。一方高級品は,奏者の音色変化の要求に敏感に応えてくれ,多彩な表現が可能です。しかしこれが逆に初級者にはコントロールしにくいと感じてしまうこともあります。初級者の方は,音楽を自分なりの解釈で表現すると言うことよりも,弾く事が出来るようになるということに重点を置きますので,こうした場合は常に大きな音で,高音から低音まではっきりと鳴ってくれる量産品の方が良いと感じることがあります。しかしそのような強弱や音色の変化がつきにくい楽器に慣れてしまうと,そうしたことに気を配ることができなくなり,結果として,表現力に乏しい初心者特有のただ弾いているだけという演奏になりがちです。そのためにも,初級者であってもある程度のレベルの楽器を使った方が,上達が早くなります。

 

 こうした量産品と高級手工品の違いは,車に例えると分かり易いです。狭い街中やお店の駐車場で日常の足として使うには,軽自動車は大変重宝しますが,片道数百kmの長距離ドライブになると,大排気量の高級車の方が真価を発揮し,余裕のあるドライブができます。また普通のドライバーが,フェラーリやポルシェなどのスポーツカーを運転したら,あまりのハンドリングのクイックさにきっと大変運転しにくい車と感じることでしょう。楽器店に並ぶ数百万円のギターは,例えればフェラーリやポルシェであり,それなりのテクニックを持った人が使ってはじめてその本来の能力を発揮できる楽器となります。概ね10万円台以下の量産ギターは軽自動車とでも言えましょうか。ちょっと弾くだけならば,その用途を満たしますが,その音色自体を味わったり,楽しむといった事には不向きです。

 

 さらに是非知っておいていただきたいことは,楽器は他の工業製品のように,新品購入時が一番性能が良いと言うわけではありません。少なくとも1年,本来の音が出てくるようになるのは,弾き方にもよりますが,最低3~5年は必要であるとお考え下さい。ギターの音色は,半分は製作者が作りますが,残りの半分は奏者が作り上げるといっても過言ではありません。

 

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